研究テーマ

―からだは生体分子が織りなす化学システム―
 私たちの体は、臓器・組織 (cm)、細胞 (mm)、生体分子(nm)といった異なるサイズスケールの階層からなるシステムとして成り立っています。中でも生体分子はこの根幹を成す生体の重要な構成要素であり、無数の生体分子が体の中を「拡散」「移流」によって輸送され、必要な場所・タイミングで「反応」を引き起こすことによって生命現象を司っています。私達の健康はこれらの無数の生体分子が織りなす相互作用によって維持されており、このバランスが崩れると、病気が発症します。この病気という「システム異常」を診断によって検知するためには、生体分子が有する膨大な情報を活用することがキーとなります。しかし、現在の診断技術ではその内のごく一部しか使われていないのが現状です。次世代の診断技術の開拓のためには、生体分子情報の検出技術、そして得られた技術を解析する技術の両面でのブレークスルーが必要となります。

 

―ナノ材料とシステム解析を融合して次世代診断を開拓―
 金属、半導体などのナノ粒子は、そのサイズにより表面プラズモン共鳴や蛍光など、バルク体とは異なる特異的な光特性を示します。また、化学の観点からはDNAなどの生体分子も「材料」として捉えることができ、これを巧みに使うことでナノサイズの精密な構造制御や、触媒反応、重合反応などを模擬した反応系の構築も可能となります。私達はこれらを組み合わせて、生体中の分子を高感度に、網羅的に、かつ簡便に検出する手法を開発しています。さらに、患者と健常者の生体分子プロファイルを教師データとして用いたマルチバイオマーカー診断モデルを構築し、患者ごとの生体分子プロファイルから疾患の有無や予防法を提示可能なシステムを開発しています。これら検出技術とデータ解析を融合することで、次世代個別化診断システムの一体化開発を目指しています。このようなシステムが構築できれば、発症してしまってからでは治療が困難な疾患の超早期診断や予防、そして革新的な創薬支援が可能になると期待されます。

 

研究テーマ例

  • 金ナノ粒子、蛍光ナノ粒子を人工DNAで自在に配列した”ナノアッセンブリ体”による、核酸、タンパク質の高感度・網羅的検出系の開発
  • 人工DNAの”触媒反応”、”重合反応”を用いた、バイオマーカー検出の簡便・超高感度化
  • 複数種のバイオマーカーの発現データを用いた、機械学習による疾患の診断モデル、薬剤の治療効果の判定モデル(コンパニオン診断モデル)の構築